こちらの物件は2014年年末にリフォームのご相談を頂きました。
経緯としては中古マンションをご購入されご入居までに傷んだところを直して欲しいとのご要望でした。
最初、ご相談いただいた際は、「キッチンのクロスを張り替えた時の費用は?」というくらいの規模のリフォームを
ご検討されていたようでした。
この時はまだ現場を確認させて頂いていなかったので「大体5~8万円くらいでしょうか?通常10万円は掛からないと思います。工期は3~4頂きたいです。」というご回答をさせていただいたかと思います。
「では一度現場を確認させてください。」とお願いし、お施主様と現場にて立会をして頂くこととなりました。
最初に現場にお伺いしたときすでにルームクリーニングが終了し、それほど「汚い」イメージは有りませんでした。
しかし、前オーナーの方がリフォームはせずにルームクリーニングのみでご売却された様子でした。
これは特に悪いことでもありません。経費が掛からなかった分、オーナー様はこの物件を安く購入できた訳ですから。
しかし、よく見ていくとクロス自体も経年劣化で薄汚れていましたし、なにか重量物(こたつ等)を設置されていたのかカーペットもかなり減っていたりといろいろ見えて来ました。
「こんなんだったっけ?」
「もっときれいだと思ってたけど・・・。」
わたしにとって、本当によく耳にする言葉です。
不動産をご購入の際にはもちろん中もご確認されていました。
しかし、不動産を購入するということはそれ自体に物凄い集中力が必要となります。
よく見たつもりでも、「日当たり」や「間取り」、「設備」くらいになってしまいがちです。
稀に、当社でも「物件を購入したいので一緒に見てくれないか?」とご依頼いただきご購入前にしっかりとリフォームの御見積を出させて頂くこともあります。その際にはプロとして色々な視点から見ますので、購入後に「思っていたより予算が掛かった・・・。」とはなりにくいです。
当然リフォームですので事前調査では判別不明な明けてビックリはありますが・・・。
(こちらのサービスは弊社へのリフォームのご用命が無い場合は、1件約1.5万円(税別)で御見積までさせて頂きます。但し高速代等は別途となります。お気軽にお申しつけください。
「ではとりあえず、全て御見積させていただきます。それからやる、やらないはご判断してください。」
早速、治した方が良い箇所をピックアップしていると、
「和室はフローリングにできないか?」と。
「もちろんできますよ。但し、畳の厚みの問題があるので少々お待ちを」と、畳を上げて厚さの確認。
こちらの畳は普段見ない薄い厚みの畳。
実はこの畳の厚み非常に大切です。床を上げる際の下地の厚みの調整は置床や材木かモルタル、もしくはそのハイブリットで行う必要があるからです。材木だけで終わってしまえば大工さんの仕事ですが、ハイブリッドになると大工さんと左官屋さんの仕事となります。少なくとも人件費は倍になります。
そこをうまく収まるように考えるのが私の仕事の一部です。
悩みに悩んで、うまく収まる方法に行きつきました。
そしてその場を離れ、後日御見積を作成しコーディネートをご提案させていただきました。
すると・・・。
「以外に安いね。折角だから全部お願いするよ。」
リフォームの内容としては
クロス全面張り替え・ソフト巾木張り替え・クッションフロア張り替え・和室畳からフォローリングへ変更・カーペット張り替え・木建具補修など
最初の「キッチンのクロス」とは全然違う規模になっていました。
「大丈夫ですか?」と、こちらが聞いてしまうくらいでした。
「但しできるだけ早くやってほしい」とのご用命でした。
「わかりました。努力します。」と。
近隣の方がいない
GOサインを頂きましたので、早速着工の準備に取り掛かります。
職人さん・業者さんの手配。資材の手配。
そして近隣挨拶。
マンションリフォームにおいて、大抵のマンションでは「管理規約上」、リフォーム工事を行う場合は上下左右の近隣にお住いの方にご挨拶を行い工事内容を説明し、ご承諾を得なけばなりません。
専用の用紙に承認頂いた印に、ご捺印頂くのが一般的です。
その印鑑がそろい次第「管理組合 理事長様」宛てに書類を提出し、ご決済を頂くのが一般的な流れです。
書類提出より2週間後から着工とか最近では1ヵ月後からとかもあります。
いくら早く工事を進めたとしても、承認が遅れれば遅れるほど工期が厳しくなります。
ですので、今回もいち早くこの仕事を終わらせるように動きました。
2件の方はすぐにお会いでき、工事内容にもご承諾いただきました。
しかし、後の2件の方が全くつかまらいのです。
曜日を変え、時間を変え通うこと1週間・・・。
全く反応がありませんでした。1週間前に投函させて頂いた手紙すらそのままの状態でした。
管理会社に連絡し事態を説明させて頂き、理事長様に掛け合っていただく事となりました。
結果、半数しか承認が得られていなかったのですが毎日通った特例でGOがでました。
但し本当の着工はこの1ヵ月後ですが・・・。
この事態を、オーナー様にも逐一ご報告させて頂いておりましたので、
「しようがないね。できれば2月には入居したいけど・・・。」
年が変わって、他の現場も次々と着工していきましたが、こちらの物件はまだ着工可能日に達していない為指を咥えて待っている状態が続いておりました。
1月20日からの着工になっておりました。
お客様のご希望をかなえたい。でも、変な工事はできない。気持ちばかりが焦ります。
そして迎えた1月20日。
朝一番に、大工さんと現場に乗り込みます。まずは和室のフローリング工事。
美しい納まりにするために
畳を上げコンクリートの床に「根太」を設置していきます。コンクリートの床は残念ながら、「水平」になっていることは稀なケースです。大体、「上から畳を敷くのだからいいだろう!」くらいの感じでしょう。
そこで大工さんと2人でべニア板や材木を薄くしたものを「根太」と「コンクリート床(以下スラブ)」の間に挟み高さを調整しながら捨て貼りべニアを貼っていきました。
仕上げのフローリングの高さも、入口の敷居から約2㎜下げくらいの美しい「チリ」で収めました。
建築の差はこういった細かい箇所の納まりが如何に美しいか?だとおもいます。
全体のデザイン(フォルム)を優先するあまりこういったところは見落とされがちです。
ここで美しさに差がつくのです。
また無理いっちゃいました・・・。
そして、クロス工事。いつもの仲間が集まって素早く仕上げていきます。
厳しい工程は100も承知です。それは仲間たちも分かってくれています。
その為、物凄スピードで作業を進めてくれました。
「工期がないから適当に!」の通じないある意味融通のきかない仲間たち。
これほど頼もしい存在はありません。
お客様のご希望に叶う工期で仕上げてくれました。
「またやっちゃったよ。これでまた工期詰めんでしょ?」なんて軽く嫌味を聞きながら。
本当にありがとう!
あれ?もうできたの?
完成させた喜びのあまり、お客様に「無事に工事は完了いたしました。」とご報告させて頂けたのは1月31日。
ご希望の1月中に間に合ったのです。実働10日。
お客様から「あれ?もうできたの?」
「一応ご希望でしたので・・・。」
「まだあと2週間くらいかかると思ったから引っ越しの準備もしてないや。」
と、こんな具合でした。その後、御引渡しの立会をしていただいたときに、
「全て希望をかなえてくれて、ありがとう。もうリフォームとかないけど人として付き合いたい」と仰っていただいた
ときにドッとこみあげるものが有りました。
無事に御引渡しも完了しました。
その数週間後。
「玄関に手摺付けられる?」とお電話を頂いたときは嬉しくて涙がでそうなくらいでした。
本当に、リフォームって素晴らしい!