この建物キーポイントの一つと言ってもよい洗面室に行きます。
弊社が営業する東京周辺部では一般的に洗面脱衣室は浴室と繋がり洗面室・洗濯室・脱衣室の機能を兼ねます。土地の価格が高い地域で、そう広くない土地に建築する訳ですから、建築の面積も大きくできず、より効率的な間取りを検討して設計しているからです。
デザインをしていると、17畳のLDKが1畳増えて18畳になる事より、2畳の洗面室が3畳の広さになると劇的に機能が変わることに気が付きます。
通常、畳2枚分の広さで、洗面、洗濯、脱衣と大きな役割を3つも受け持つ洗面室。実際は2畳では狭すぎるのでしょう。
畳1枚分増やすだけで、アイロンや洗濯物の整理ができるスペースと、ハンガー等を掛けるスペースが生まれました。
奥の勝手口ドアをあけると、前述の物干しスペースにアクセスできるようにデザインしております。
洗面化粧台はオリジナルの造作洗面台です。長期使用を考えると、目地部のメンテナンスが大変ですがタイルを使用した洗面台は雰囲気が良いです。
お次は階段。
建物の中で、上下階の連絡通路として機能し、最も複雑な形状をしている階段。唯でさえその形状から存在感があります。私的には階段があまり主張して欲しくないと常に思っています。
その為、踏み面はフローリングと色合いを合わせておりますが、蹴込板、側板(ササラ)はシンプルな白に統一。クロスと同化させることでなるべく主張しない様に、デザインしております。側板も工夫して、強度を保ちながら薄く見えるようにしています。
シンプルにするとかえってつまらない空間になってしまう事があります。そこで手摺は、私がデザインしたものを家具屋さんに作ってもらっている完全オリジナル商品を使用しています。一面クロスとなる壁面に、無垢の材木がアクセントなり、空間を引き締めます。素材は基本的には床材と合わせています。今回はオークです。
手摺の設置位置ですが、詳しい方は気が付いておられると思いますが、一般的には外側に設置しますが弊社の場合、階段の内側に手摺を設置しています。これには2つの意味があります。
1つ目はやはりデザイン的にシンプルでありたいということです。外側に設置すると踏み面の高さと手摺の高さ関係から、階段の勾配か変わる度に手摺の角度も変わり、ぐにゃぐにゃと複雑になってしまいます。あくまでもシンプルに見せたいので内側に設置しています。
2つ目は外側に設置すると手摺分階段の内側を人が通る事となります。廻り階段では内側は踏面が狭くなります。少しでも外側を通る方が足元的は安全だと思っています。
階段を登りきると2階のホールにたどり着きます。私は階段を登り切った先に見える景色をイメージして家をデザインすることが多いです。
弊社の物件では、少し大きめの2階ホールとそこから出入りできるバルコニーという組み合わせが多いのはその為です。もちろん、他の部屋を通らずバルコニーにアクセスできることも重要な要素だと思いますが、狭い階段室で圧迫感を味わった後にくるホールでの開放感はとても感動的だと思います。
(住みだすと1~2週間くらいで感動も驚きもなくなりますが・・・)
通常、2階のホール部には収納を設けるよう心掛けています。2階のトイレ用品や掃除道具などの収納に役立つと思います。
今回は奥行が浅い収納となりましたので住まわれる方が自由に調整できる可動棚としました。
そしてベランダ。
一般的な建売住宅ではベランダの奥行きはそう広くありません。ベランダ=洗濯物を干すと考えているからだと思います。
しかし、私はべランドほど面白い空間は建物の中ではそうはないと思っております。
建物の中に有って、外であり風や雨が当たり自然を感じられる空間です。洗濯物を干すだけとするには、とても勿体ない空間だと思います。
楽しめるベランダは贅沢な空間だとおもいます。
ベランダを楽しんでいただくため、弊社の場合、大抵奥行を深くし一部屋根を掛け、照明器具を配置し、電気と水道の設備を完備するようにしている建物が多い訳です。
人目を気にせずに、ベランダで時間を過ごすために建物の形状が目隠しとなるようにデザインしています。
ただ奇抜な形状にすることがデザインではないという事は前述の通りです。
最後は、寝室、子供室室です。
デザインする際には、広さも十分検討しますが、重要視していることは、その部屋で使用すると想定される家具が配置できるか?の方を重要視しています。
昔、ある大手の建売メーカーの物件の資料を見せて頂いた際に驚いたことがありました。『全室6畳以上』と謳っていたその物件は部屋の形が歪で6畳あってもベッドを配置すると他の物が置くスペースがありませんでした。子供室を想定しているような部屋だったので、私は通常であれば勉強机などは必須アイテムだと考えます。一般的な考え方ではないですがスタディスペースを設け、『寝る部屋』と『勉強部屋』を分けるという考えたもありますが、そういうコンセプトも見受けられませんでした。確かその物件は都心の狭小地であったと思いますが、畳数表示を稼ぐのではなく4.5畳でも使える間取りをするべきではないかと思った事があります。
我々作り手は、住まわれるご家族のことを考えて、しっかりとデザインするべきだといつも思います。
『最後に』
弊社で建売分譲をさせて頂いている物件では実は『実験』的要素が多分に含まれております。
弊社は建売分譲のみならず、注文建築も承っております。その為、建売事業で様々な考察と実験をし検証しております。
周りの同業他社様からは『変わった建物』や『デザインは良いけど、高い』などの評価を受けます。
客観的に考えると、頂ける評価はその通りだと思います。
私も以前大手のローコスト建売メーカーで勤務しておりましたが、ノルマに追われ考えることなどなく流れ作業で建築していました。それが『モノづくり』として我慢できず現在に至っております。
建物一軒一軒、様々なことを考えデザインし、職人仲間たちとより良い住宅を作る為、現場で何度も打合せを行い仕上げております。
確かに金額的は少々高くなっているかも知れませんが、価値を分かって頂ける方に大切に住んで頂きたいと思う今日この頃です。
『パース集』
建築工事前の設計前に私がデザインしたパース集です。建築工事前に、しっかりとしたパースで検討していますので、あまり大きな失敗はないかなぁ。