木造耐火建築新築工事(昭島市昭和町N様邸)大工工事・屋根工事
『何が一番大切か?』といわれても選ぶのは非常に難しいのですが、まずは構造をしっかりさせないと次に進めないので、筋交いや構造金物を設置していきます。
現在の木造は材木だけで建築しているモノは非常に珍しいケースとなりました。
構造金物の使用箇所は、柱と梁、梁と梁、柱と筋交いなど部材と部材の接合部に使用します。構造金物が無かった時代では、大工さんが『刻む』作業をしていました。
『刻む』とは樹の特性を知り尽くした大工さんが接合部を複雑な形状に、ノミやカンナで削り『継手』や『仕口』といった接合部を造り、材木と材木を組んで行きました。
しかしこれには熟練の技術と作業時間が必要になります。
確かに、木と木、木と金属の組み合わせを考えると、変形であったり粘り具合など同じ材料である方がいいと思います。しかし現在の建築では経済性も大変重視されていますの金物を使用することとなっています。
それ以外に、金物を使用する利点は『精度の均質化』ができます。
前述のように、『刻み』は簡単な加工ではないので大工さんの『腕』に依るところが非常に大きいです。大工さんの『腕の良し悪し』で建物の『良い悪い』が決まってしまいます。
実際、現在では『刻み』が出来る大工さんが減ってきています。
建築は『文化』だと信じて疑わない私にとっては非常に悲しい現実です。
弊社の大工さんは『刻み』もできる技術を持っていますが、やはり経済的な側面が大きいですね。
更に、接合部が一定の強さを確保できます。
工場で作られた金属プレートなどで接合部を固めますので、自然の材木とは違い一定の強度が確保できます。
その他、様々な理由により構造金物を使用しています。
設置はそれほど難しくはないですね。基本的にはプレート類は指定のビスで止めていく感じです。
そして、外回りの『構造用合板』を張って行きます。
『構造用合板』は筋交いの代わりをします。筋交いのような角材ではなく、面材で強度を取ることになります。イメージ的には2×4の建築に近くなります。
柱と柱の間に『構造用合板』を張り、指定の釘で指定の間隔で止めて行きます。
外壁の下地の関係上、外周部全体に張る為、『耐力壁』でない部分は、釘の数を減らして施工したりしています。
建築には『バランス』が非常に大切です。『ただ硬い』だけの建築は強い地震により壊れてしまう可能性があります。それは、『生木の枝』と『枯れ木の枝』のイメージです。『生木の枝』は直ぐに曲がりますがなかなか折れないですが、『枯れ木の枝』は曲がりは少ないですが一定の力を掛けると折れてしまいます。
そこで、手間ではありますが『しっかりと強度を出す』ところと『抜くところ』を造っているのです。
更にこのタイミングで『制振ダンパー』の設置も行います。
今回ご採用頂きました制振ダンパーは、住友理工株式会社製の『TRCダンパー』です。
こちらは、内蔵された制振ダンパーが地震力を熱エネルギーに変換し、力を吸収します。
こうすることで、『振れを制する』というシステムです。
専門的なお話ですが、こちらのTRCダンパーは単体で壁倍率1.3倍が確保できます。
『え?たったの1.3倍?』と思われた方は、かなり建築に御詳しいとお見受け致します。
確かに45㎜×90㎜の筋交いですら2.0倍取れる訳ですから・・・。
しかし考えてみると、筋交いは『耐震』、TRCダンパーは『制振』なのです。
壁倍率は『耐震性』の話ですし、筋交いはこちらに対応します。
しかし、TRCダンパーは『制振』なので直接は関係ないということになります。その上で更に1.3倍もの耐力壁長が取れるということになります。
ですから、少し建物強度上がるといった結果になるわけです。
上棟が終わって直ぐに屋根の『アスファルトルーフィング』を施工いたします。
屋根材を葺くまでは完璧な防水とまではいきませんが、アスファルトルーフィング施工後はかなりの確率で雨水の浸入を防ぐことができます。
そして間髪入れず屋根(カラーベストコロニアル)を葺きました。
実際、あまり見えないところではありますが、折角なので屋根の色もお施主様に選んでいただきました。
今回はシルバー系の色を選んでいただきました。
ブラックだと『建売』っぽく見えますし、なにより太陽の光をまともに吸収してしまいます。
出来るだけ反射を利用して、内部空間への熱を伝えにくくした方が、夏を快適に過ごせると思います。
今回は、大工工事の前半と屋根工事を書いてみました。
次回は躯体検査について書くことが出来ればと思っていますが、先に『構造見学会』かなぁ・・・。